ただの男がバイクで世界一周を叶えるまでの記録。

高校生からの夢、バイクで世界一周を叶えるまでの記録をまとめたブログ。旅の理由、決断に至るまで、お金のこと、旅の準備、旅の様子など、考えうる全てを後に続くライダーのために残したいと思っています。

【Day139 Uyuni〜Colchani】青と白の世界で

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4月8日(土)晴れ


8時起床。ぐっすりと寝られた。上段の兄ちゃんのイビキが凄まじかったため隣のカップルに寝不足を心配されたが、大丈夫だ。俺の先輩の排気量はあんなもんじゃなかった。

 


このホステル最後の朝食をいただきながら哲学していた。

 


俺は旅に何を求めているのか。

いや、今更だしそんなことはとっくの前にわかりきってはいるが。

 


ケトルからカップにお湯を注ぎながら、ふと考え、ミゲルやアレックス達の顔がすぐさま浮かんできた。

 


まあ、わざわざ口にするのなら、それは偶然起こる何かだ。

出会い、絶景、クソみたいなトラブル。それらは全て偶然であるから価値を持つ。ジャケ買いと一緒だ。

その偶然性に神の存在を感じたり、人生に奇妙な縁を見つけるのだろう。

 


たぶん、この土地に居ることがそのように俺に哲学させた。

 


ウユニ塩湖。人の集まる場所。皆様々な思いを胸にこの地に集う。ここはそんな場所。

 


しかし俺にはそれがない。

何故か。この数日間ずっと考えていた。

 


一つは、捻くれた性格。天邪鬼ともいう。

 


二つは、俺の人生にこの土地が関わりがなかったから。

だから以前から言うように、俺はボンネビル・ソルト・フラッツの方に価値を見出す。そりゃ当然だろう。俺はバイク乗りだ。鏡張りとか知るかよ。走らねーと。塩湖はよ。

 


三つ目。もう既に知っているから。

調べなくても、知りたくなくてもこの場所がどういう場所かは嫌でも目と耳に入ってきた。写真や映像も腐るほど見させられてきた。

だから知ってる。少なくとも、知った気になってしまっている。そこはもう攻略本で読んじまった。何ならプレイ動画見て満足ってか。

 

それは俺が求める偶然性とは対極の存在と言える。

酷いことを言うと、クソつまらん。

だって知ってるから。いや行ってみれば想像以上に美しいよとか言われても困る。俺にとってそれは確認作業の域を出ないから。本当に悲しいことだが、そうなってしまった。

だから、他の動機や興味が必要だ。

こうなると魅力を感じないのも仕方ないと思う。

 


そしてそれはこの土地だけに言えることではない。

ウシュアイアの、世界の最果てに於いても同じことが言える。

もう知ってしまっているし、金を払って数km先のポイントへ行って、はい最南端達成。写真撮って記念にしてちょうだいね。トロフィー解放おめでとう!

ふざけてんのか。○ね。クソソシャゲのクソ課金かよ。人に用意されたもんを欲しがるかよ今更。

 

偶然性など皆無だった。

 


だが、このウシュアイアでの行動を他人に話すと、やはりそれは奇行と呼べるものであったと納得させられる。

そりゃそうだ。自覚はある。普通は何も考えずに行く。その「何も考えずに」というのはマイナスの意味ではなく、ただただ純粋な美しい行動という意味だ。

かと言って、自分の美学に嘘をつくことはできない。

 


ではなぜ、そういった誰もが実行することを実行せずとも、俺は十分に満ち足りているのか。

 


それは、偶然性に全て身を捧げているからだろう。

期せずして起こった全ての出来事に何らかの意味を求め思考し、結果的にそれら全てを自身の旅とする。

それは要所要所で俺に哲学をさせる。

だから小さなことでも旅に物語性を見出すことができる。

 


そしてこれは、「生活をするように旅をしたい」という欲求にも関連している。

そしてその欲求は、「もう一つの時間を見つける」という最大目標達成のためにも必要なものである。

また、「せっかくだから」と言うような理由から何か行うことは、その考えから逸脱した行為となる。

カケラでも関心のあれば挑戦する意味は大いにあるが、全く無いにも関わらず、仕方なく俗物的に実行するのはやはり美学に反するとも言える。

 


かと言って、難しいもんだ。

何でこれほどまでに人間ってのは異なる生き物なのか。

他の人たちは一体何を求めて、どこまでそれに殉ずることができているのだろうか。

少なくとも、俺はこの旅に命を賭けている。

であるなら、毛の一本たりとも残さず捧げるのが当然だろう。

 

 

 

21:56 ウユニ塩湖北東部野営地

聞こえるのは、微かな風の音と自身の衣服の布ずれの音、そして日記帳に走らせるこの万年筆のカリカリという筆記音のみ。

辺り一面塩の大地の中、青白い月光にテントの生地越しに照らされ、静寂を壊さないように誰に言われるでもなく厳かな心持ちで日記を綴る。

 


ホステルを出たのは13時。結局4日も世話になった。

ウユニの街の外れにある列車の墓場で写真を撮り、ウユニ塩湖隣の街コルチャニへ。

 


塩湖突入前に食料と水を調達。聞くと、肉などの生鮮品はないようなので、チリ以来に魚の缶詰とスパムのようなものを買った。記念になるのではと、マルちゃんのカップ麺もついでに。

遊びに来た商店のセニョリータのお友達が英語を話せたため、ウユニ塩湖で夜間車がやって来ない安全な場所を知らないかと聞いたところ、湖の入り口から陸づたいに30分ほど走ったとこがお勧めだと丁寧に教えてもらえた。

 


準備万端、いざ湖へ向かうと、なるほど確かに。これは美しい。

青と白のシンプルなコントラスト。遠くを見渡せば湖と雲が溶け合い、大地と空がひとつになっている。

 


塩水のぬかるみを避けながら遠くに微かに点として見えるモニュメントに向かってバイクを走らせ、様々な国籍の方々と写真を撮ったり撮られたりしながら、ここが世界でも最も人が集まる景勝地の一つであるいうことを実感した。

 


日も傾き始めたため、野営地の確保に向かった。

しかし、陸に近づくにつれぬかるみが増え、2回ほどスタック寸前まで陥ってしまい、先程までの観光地らしい和やかな雰囲気から一転、真剣に命の危機を感じた。

 


人の来ない場所、夜間車が来ない場所、ぬかるみのな雨が降っても水没しない場所。

これら全てを満たす場所を、夕闇差し迫る中、目標も高低差もない真っ白なこの地で見付け出すのは非常に骨が折れた。このような条件下で野営地を探すことなど、おそらく今後そう無いだろう。

 


どこを走ったかもわからないままウロウロと走り回り、やっとの思いで野営地を確保した。

硬くて刺さらないのではと心配していたペグは驚くほど気持ちよく刺さった。

急いで設営しながらも、この貴重な経験を記録し逃すまいとGoProにカメラにスマホにと同時に操り大忙しだった。

 


何をするにしても纏わり付く塩に翻弄されながらも何とか陣を構え、西に沈みゆく夕陽を眼前に見据え、ダカール・ラリーの日清カップヌードル宜しくマルちゃんカップヌードルを食った。今までの人生でも特別なカップ麺だった。

追加のパスタには、目の前にある無限とも言える天然の塩を軽く振った。

指先を舐めてみると、見た目よりもしょっぱくなくちょっとだけ甘みを感じた。

 


それからは、刻一刻と変化する塩湖の姿に圧倒され続けた。

西の落日で一瞬紅く燃え上がったのも束の間、東から昇る煌々とした秋月が塩湖を青白く冷たく照らし、良夜に細い月影をどこまでも伸ばした。

太陽と月の入れ替わる寸刻には、俺は初めて星を観たんじゃなかろうかと思ってしまうほどの幾多の星が、広大な塩の湖の闇の中に頼りなく存在する機械と人間とを優しく照らしてくれていた。

 


たった一回の野営で、ここまで宇宙の存在を、地球に居るのだということを強烈に感じさせられたのは初めてだ。

このまま寝てしまうのは勿体ないくらい、今、正にこの瞬間目の前で変化し続けているこの場所からの景色に魅了されてしまった。

 


来て良かった。

恐らく、食当たりもなく予定通り朝日を見に来ていたら、こうやって野営することはなかったろう。

特別な場所になった。俺が計画して、俺が実行して俺だけの湖の姿を知った。

不思議なもんだ。全く興味がなかったと言うのに。 

 


来て良かった。

もう暫く起きていて、この極上の俺だけの世界を目に焼き付けるとしよう。

月見マテ茶が、美味い。

 


走行距離 80km

金 食糧1000

 

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見納めってことで。洗面台でお湯も出るわトイレにゃ紙も便座もあるわでムチャスグラシャス。
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寛ぎスペース。食あたりの夜はここでうずくまっていた。
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食堂。綺麗で可愛い机と椅子、紅茶コーヒー飲み放題付きの作業スペース。俺がウユニに居着いたのはここの存在がデカい。
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玄関から上がったとこ。ここでTさんに声掛けられた。
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こんな感じの中庭いいよな。防犯上も大変便利だし、なんか学校の校舎みたいな雰囲気で好きだ。
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俺のブログはお役立ち情報など積極的には記録しないけど、ここは特にライダーにお勧めしたいかな。中庭にバイク入れられるから超安心だし、外に蛇口ホースあるからウユニ塩湖野営後もテント立ててそのまま丸洗いさせてもらえる。オーナーのセニョーラもとても良い人だった。
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一番好きなバンブルビーと。俺は機械との友情とかに弱い。つっても彼らは機械生命体だけど。ここでこそ遠近法で撮るべきだったかなぁ。
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これは美しい!そのままHorizon zero downに出てきそうだ。
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ちょっと弱そうな名悪役たち。
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ハリソン・フォードなら何度も見てきただろう景色。
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あ、ONE PIECEロケットマン思い出した。海列車の話もロマンあって好きだ。海に線路掛けるとか発想がすげー。
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西南西に真っ直ぐ伸びた線路はチリに向かっている。
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既に10km手前から塩っぽいのが見え始めた。
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蜃気楼?溶けてる。
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コルチャニの外れの商店。この辺は本当何もない。
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七つの大罪とキンハ?どんな縁だろう。
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ウユニ塩湖の野営について教えてくれた皆。こう見ると全然日本人にもいる顔だよなぁ。俺の友達に普通におるよ。
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楽しんで来た帰りだろうライダー達と少しお喋り。
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ちっこい恐竜たちがわちゃわちゃ遊んでるように見えてめちゃくちゃ可愛いくて「何こいばり可愛かーばり可愛かー」てずっと言ってた。
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ダカール・ラリーて今はボリビア走りよると?
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彼岸島ファンとしてはいつの日か雅様のくそみてぇな旗も追加しなければと使命感が生まれた。
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食い物屋でもないかと思ったらホステルだった。飯屋あったらクソ儲かりそうなんやけどな。
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珍しくフットボールではなくバレーボール。
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ハイエースか!?と期待したが違った。にしても絵になるぜあんたら。
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過去の日本人ライダーも貼ってたりするのだろうか。
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迷ったらこのポーズ。
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今までいろんな場所でペグ刺してきたけど、初めての感触だった。ぬるっとした感じ…。
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やっぱ慣れ親しんだこのパスタが一番美味い。
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カップヌードル最高!の図。
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脚気合い入れてて良かった。
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割とお気に入り。
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なんかデカい手があるらしいスポット。何km先なんだろ。
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西の空。
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意外と美味かった!にしても茹でるのに時間掛かる…。標高3660mもあると沸点が80℃くらいだから上手く茹でられんのだ。富士山ホテルでは確か圧力釜で米炊いていた。たまに食うカップ麺は、確か5分は待っていた。

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本当にこんな色だった。THE・逢魔時。
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試行錯誤で撮られた星空写真たち。メタボンさんのアフリカキャンプのあの奇跡の一枚を目指したが、無理だわ。でも一瞬テントをヘッデンで照らせば良いよとコツを聞いていたから、何とかそれなりにできて俺は満足。アストロレーサー欲しくなるな。星空撮影も勉強しよう。
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拡大すると普通にクレーター見えて驚いた。昇り始めは真っ黄色なのに、どんどん青白くなっていった。
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テントからの眺め。
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ポツンと感が出ているかなと。
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念願の月見マテ。ミゲルに写真送ったらテンション上がってた。
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これはiPhone撮影。自動処理が上手く働いたんだろうな。青と白の世界に野営のワンシーンが上手く調和したお気に入りの一枚。
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ムーンライトのこのポケット、最近は専らマテ茶専用ホルダーになってる。