吉田さんのアフリカ縦断記を読み終えた。
感想は今度じっくり書き上げたい。
ただ先に、忘れないうちに書き残しておきたいことから記しておく。
良い写真とはなんだ?
アフリカ縦断記を読みながら、記載された写真の数々に何度もページをめくる手が止まった。
見開きで目にしたプロローグのグレートリフトヴァレー、エピローグのテーブルマウンテンとケープタウンの街並みには身体が数分硬直し、下っ腹辺りから何かグラグラと熱いものが昇ってきて息を呑んだ。
そんな体験を経て、自身が写真を撮る意義と、「良い写真」という言葉の意味について数時間考えた。
私は良い写真を気持ちよく撮りたいがために、防水防塵耐衝撃性能も無いバイク旅には不向きの一眼レフをわざわざ持って行こうとしている。
一眼レフが得意とするボケなどを使って相棒をかっこよく撮ってあげたいし、動物や昆虫もズームを使って迫力出して撮りたいと考えている。
しかしそんな一眼レフは前回の記事でも触れたように私の旅においては沢山の問題がある。
走行中気は使うし歩行中は盗られないように用心しないといけないし、そもそも結構使ってるから恐らく旅の途中で限界が来る。では新調するか?そんな予算はない。
ではそれ以降はコンデジのみで撮影することになるが、満足のいく「良い写真」とやらは撮れるのか?
ここまで考えて、
「良い写真とはなんだ?」
と考え始めた。
高性能のカメラ機能が付いたスマホが普及し、現代は一億総カメラマンの時代とも呼ばれている。SNSを見ると沢山の人々が写真を挙げているのが見られる。
「インスタ映え」などという言葉も現れ、人々はこぞって俺が私がと「良い写真(?)」を撮らんとする故に、目的と手段がカオスに乱れつつある時代でもあると私は考えている。
彼ら、もとい、我々はなにをもって「良い写真」と捉えているのだろうか?
色彩、構図、画角、被写体、ボケ表現、光など、写真を一枚の作品として表現するにあたり考えられる要素は素人の私でもこれくらい挙げられるように、沢山のものがある。
これらをいかに慎重に拘ってシャッターを切ったものが良い写真なのだろうか。
ではなぜプロでもない人間が良い写真を撮りたいと思う?SNSで平凡な承認欲求を満たすためか?あとで現像するためか?
そもそも写真は作品としてだけでなく、記録のためとしても撮られる。
家族の思い出のための記録、仕事の記録と沢山あり、記録としての深さはそれぞれである。
では私が旅で撮りたい写真はなんだ?芸術作品か?記録か?
吉田さんの撮った写真を改めて見直してみる。
ほとんどの写真が何気なくシャッターを切ったと思われるものばかりだ。最低限考えられているかもしれないが、恐らく俗にいう「良い写真」を構成する要素には重きを置かず、気の向くままに、撮りたいから撮ったものと思われる。少なくとも私はそう感じた。
ではなぜそのようにして撮られたであろう写真が私を魅了したのか。
思うに、撮った本人の気持ちや、その時の本人を取り巻く状況が写真に鮮明に表れているからだ。
無論私が興味を持つ分野の写真であるし、それまで文章で様子が伝えられているからと言うのもある。だがそれだけではない。
今までも何てことない写真に心を打たれることがあった。その辺の人が撮った家族や動物の写真、展示館でみた戦争史の写真。
そのような印象に残る写真を見た時に思うのは「どうしてこの写真を撮ったんだろう」「どんな気持ちでシャッターを切ったんだろう」ということ。
そこから、こうだったのではないかと想像を膨らませ、温かさに頬が緩むこともあれば、悲しさに涙することもある。
思い返せば私が今でも印象に残っている写真と言うのは、それが作品であれ記録であれそういうものだった。
私がこれまで撮ってきたほとんどの写真は安いコンデジによるもので、スマホのみで撮った時もあった。しかも当時は世間一般で言う良い写真を撮るための技術も知識も持ち合わせておらず、ただ思うままに好きなものを撮り続けただけだった。
適当に撮られたそれらの写真は駄作となるか?人様に見せられないものか?いやそんなことはない。少なくとも私にとってはどれも大切な、愛おしい写真に違いない。
だったら答えは出た。
旅の途中で一眼レフが壊れても構わないじゃないか。
コンデジでも大切な写真は撮れる。
私の気持ちが詰まった写真を撮るだけだ。
それが記録にも作品にもなる。そんなものはあとからついてくるものなのだろう。
どうやら私自身、「良い写真」の呪いにかかっていたようだ。
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