8月18日(金)雨のち曇り
21:58 デナリビジターセンター30km手前野営地
昨日は見事にサボり、今日もそうしようとしていたが書く。やはり気が抜けているようだ。しっかりしよう。
昨日はWalmartの Costco。また声掛けれてしまったが、「うん、カード作るの!!」といつもより爽やかめに答えたらニッコリでクリア。
んでHUNTER×HUNTER観ながらパクついていたら、日本人女性に声かけられた。注文時に俺が気づいて、なんとなく声かけようか迷っていた人だった。
名はマイコさん。聞くと、どうやらマイコさんは若い頃長い長い旅をしていたようで、それもあってか「シャワー、浴びたいでしょ?」と心の中を読まれてしまった。
そうだが、そんなCostcoで明らかにパラサイトしている髭面の身元不明の男を…。
ご主人にも挨拶して、何と一泊までさせてもらうことになった。
18時からお家にお邪魔したが、郊外の山の中にあり、広い庭には温室と畑まであって、それでもまだまだ敷地に余裕があった。娘ちゃんのバースデイにと取り付けたジップラインまであった。
まずは念願のシャワーをお借りした。水野家でのシャワーと同じくらい感動した。川の水でもない。捻ればお湯が体に降り注ぐ人類の尊厳を保つための発明。
最後に浴びたの、ドラムヘラー以来?もう計算したくもない。書いてて情けなくて泣けてくる。
ご飯にカレーを頂いた。今の俺は毎日カレーでもいいくらいだ。米もモチモチで幸せだった。コロナビールまで頂いてしまった。洗濯も。
お二人の馴れ初めを俺から願って聞かせてもらった。
ご主人の名はマイケル。アメリカで発音するならマイコウ。マイケルて発音は日本だけらしい。
マイコさんにマイコウ。名前似すぎだろ!!
お二人は2009年くらいにニュージーランドで出会った。すでにその頃、カナダのワーホリなどを経て旅人としても屈強だったマイコさんは、後から職場にやって来たマイケルと出会った。
ファーストコンタクトは最悪で、マイコさんはトイレを我慢していたから「おう!!」の一言でマイケルへの返事を済ませ、一瞬で立ち去ったらしい。その時のマイケルの気持ちを想うと確かに気の毒だが、面白い話だ。
そして段々と交友を深め、アメリカで言う「友達以上恋人未満」的な関係でお互いをゆっくりと知り、何やかんやでマイケルが彼の友人に「マイコは俺の彼女なんだ」と勝手に認定していたことがマイコさんにバレ、「あたしってあなたの彼女なんだ?」と詰め寄られ、何やかんやで今に至ったと。
書いてて笑っちまう。人種の壁なんてねーな。漫才みたいだ。
マイケルも日本語をちょっとだけ知ってて、英語がカスな俺に気を遣って一生懸命話し掛けてくれた。彼の話すアラスカの狩猟の話はとても興味深かった。ライフルもフツーにオープンキャリーで使うとか。庭にムースが現れて畑の野菜を食うから、罠やボウガンで仕留めるとか。もうわけわからん。
マイコさんは2006年からカナダにワーホリに出かけたのが初の海外一人旅らしい。
そっからマイケルと出会った後も、二人旅やったりまたそれぞれ一人旅やったりして、10年くらいは海外を旅していたようだ。
国の歴史を現地人から聞くことが旅の醍醐味だったという。そのため、ちょっとづつ言葉を学んで力をつけて深い話ももっと聞き出せるようになっていくのが嬉しかったとか。素敵な話だ。そんな言語の勉強の動機もあるんだな。
アラスカでの生活の話もたくさん聞いた。
六月は白夜。七月はサーモン漁。8月はクソ天気。9月はいい天気で、10月から一気に寒くなるとか。
極夜は12月から3月だったかな?やはり鬱になる人もいて、それが無理で日本に帰る人も。
だからフェアバンクスでは家の中でできる遊びとして、ジグソーパズルがあり各家庭で交換する場があるとか。
外気はマイナス50℃の日も?もう何言ってんのかわかんねえ。肺胞凍っちまうだろそんなん。
室温は15℃?九州人は間違いなく死滅する。
やはり暖炉が一番暖かいらしいが、なんか前のオーナーさんが売却の条件で仕方なく埋めてしまったらしい。雪国なのに。
他にもたくさん聞かせてもらったが、一番心を掴まれたのはアラスカの狩猟生活だ。
その6月のサーモン漁だが、これは各家庭で毎年当たり前にある行事の一つというから驚いた。趣味ではなく、生活のためだ。庭のムースを狩るのもそうだ。趣味のハントではなく、一家庭がやるのだ。
サーモン漁も色々決まりが設けられており、どうやら先住民の家庭には水車を使用する権利が与えられており、それを使うと桁違いに獲れるらしい。実際に動画も見たが、確かに反則的に効率が良すぎる。獲れたサーモンを実際に持ち帰れる量も、水車の家は桁違いだった。具体的な数は忘れた。また、この権利はあとで手に入れることは不可能に近いらしい。富士山の山小屋の権利のようなもんか。
一般家庭では主に手持ちの長い玉網を使って獲る。サーモンが網に自ら突っ込んでくるのをひたすら待つのだが、釣りと同じく場所が重要らしい。上手けりゃ一回で10数尾とか。釣り人からしたらそれでも意味わからん数だ。そもそもサーモンいねーよその辺に。
そして獲れたサーモンは。可能な限り鱗取ってハラワタ出して捌いて、保存のため塩漬けや燻製、ピクルスにしたり冷凍したり。
筋子はこっちの人たちは食わんため、一言欲しい旨を伝えておけば、毎年どっさり貰えるとか。ほんと意味わからん。
マイケルが教えてくれた魚を突くための銛も驚いた。ゴムで発射するのはダメらしく、腕力だけでブスッといくらしいが、これが難しいと。トラウトやグレイリング、ホワイトフィッシュ?がターゲット。グレイリングはアラスカ人公認で美味い魚のようだ。俺の舌は別に貧乏舌じゃなかったようだ。
今朝はご飯と味噌汁、焼き海苔にふりかけ漬物に、なんとキングサーモンのピクルスをいただいた。これが本当に美味くて美味くて…。
肉厚に切られたサーモンを瓶に詰めてピクルスにしているのだが、食感はネットリしていてアホほど濃厚。これはキングサーモン特有の、身に多量に含まれた脂ゆえらしい。普通のシルバーやレッドとは比較にならん脂の量とか。だからキングなのか…。
これは本気出したら米10杯はいけたが、また今度来た時に頼もう。
アラスカの生ける伝説、伊藤清一さんについても教えてもらった。
もうじき80にもなられる方で、星野さんとも交友のあった方だ。地元民も崇めるアラスカ一の罠士だとか。写真の男らしい顔つきには見覚えがあった。
「俺のアラスカ」という本のタイトルに親近感を覚える。帰国後の課題図書だ。
そして今日11時ごろ。、マイコさんとマイケルに見送られて出発した。おにぎり忘れてソッコー戻ったが。
その後自然史博物館に行って、星野さんの写真と言葉に触れてきた。
誇らしかった。今でもなお異国の地に名を轟かせる同じ日本人の男が。そしてそんな男に憧れて、今ここに居ることが。
ここでも日本人家族のヒラノご一家と出会い、旅の話を聞いてもらったりキッズたちとお話ししたり楽しい時を過ごした。
ご主人が出張でシカゴに来ているらしい。だから子供たちもこっちの学校で後少し過ごしたら、また日本の学校へ行くのか。すごいなーほんと。
感受性の高い子たちだったから、きっと大人になっても今の生活を糧にできるんだろうな。
狼に会ったよーと話したら「え!すっげー!!どこでどこで!?」と目を輝かせて素直な反応を示してくれるのが実に可愛らしかった。「カメラの人」で覚えてもらえたら嬉しいな。
んで今はアンカレッジまでの道、3号線沿いで堂々と野営中。
星野さんの死因について改めて知ったこともあり、やはりクマは怖い。狼はまだなんか心が通じ合えそうだが。
マイコさんとも分かり合えたが、結局最後は運任せ。やることやったら「明日生きていますように」と心の中で願って目を閉じる。
良い二日間だった。
マイコさんたちとの出会いで、アラスカへの想いはさらに強まった。
今回は満足して日本に帰るが、アラスカとの付き合いはこれで終わりではない。
だって、面白すぎるだろ…。なんなんだろうな、この、俺を惹きつけてやまないアラスカのチカラは。厳しい北の大地ゆえに自然との共存を強く感じやすく、そこに人間と自然それぞれの生きる力を見出して、惹かれているのだろうか。たぶんそうだろう…。
育てて、獲って、備えて、食うことは、生きるということそのものだ。
そして御すのではなく順応し、共存する。そこには緩やかな悠久の時が流れていく…。
人生は短い。
全ての好奇心を成仏させることはできない。
なら、俺はアラスカだ。移住だって…考えてしまうさ。
旅は続く。
走行距離 170km
金 ガソリン1500 博物館2000
俺の原点。誇りに思う。
星野道夫没後20年特別展での衝撃を想い出す。
是非、拡大して読んで欲しい。
こんな可愛いのがいるのか…。
生きる術。
アラスカ開拓には、アメリカ西部開拓時代におけるR66と同様に、自動車整備士が必要不可欠だった。
ゴールドラッシュ。
野営するなら覚えておくに越したことはない。
アラスカを表すのに素晴らしい作品。こういうの大好きだ。
お!同志の額賀さん愛用。世界のOLYMPUS。
こちらはPENTAX。ほんとすげーよ日本のカメラ。
相棒のドラゴンフライ!俺の方がいい味出てるな、ふふ。
いいなーと値段見たらおったまげ。
博物館外観。UAF(University of Alaska, Fairbanks)の施設のため、大学敷地内にある。
マイコさんちのおにぎりをパクつく。おにぎり…帰ったら死ぬほど食ってやる。
ど田舎では人間よりも獣対策に比重を置く。この辺の感覚は慣れとギャンブル。