ただの男がバイクで世界一周を叶えるまでの記録。

高校生からの夢、バイクで世界一周を叶えるまでの記録をまとめたブログ。旅の理由、決断に至るまで、お金のこと、旅の準備、旅の様子など、考えうる全てを後に続くライダーのために残したいと思っています。

【Day266 Deadhorse〜Coldfoot】到達

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8月15日(火)くもり時々晴れと雨

 


22:47 COLD FOOT CAMP

7時起床。オートミール3袋を割と無理やり腹に詰めて体温上昇を促す。生姜湯とジンジャーティーもたっぷり飲む。

昨夜は予想通りこの旅で最も冷えた夜となったが、最大防寒で寝たおかげで寒さで起きるということもなく快眠できた。

よって、これ以上寒い夜を今後南下して行く中で迎えることは無いため、俺の防寒面での作戦は信じていた通り完璧に通じたということになる。ヨッシャ!!

 


起きていた時に降っていた霧雨は止み、段々と雲の隙間から青空も見え始め驚くほど暖かくなっていった。動いている時はシャツ一枚でも過ごせた。

 


釣りついでに川辺を散歩したら、昨日は見かけなかったような鋭利な爪を持った獣の足跡を野営地から100mの所に見つけた。知らぬが仏だ。

にしても、生きて朝を迎えられて、思わず「生きてる」と目を覚ました瞬間寝ぼけ眼でシュラフの中で呟いた。

正直、結構恐かった。そりゃあ明らかに食われたムースの死骸なんて見りゃあな。

 


10時に出発し、30km先のデッドホースには10:30着。というか、知らぬ間に入っていた。「DEAD HORSE CAMP」の看板を見るまで地図上のあそこにいるんだと気づかなかった。それほどに、本当に何もなく、一切町の様相をしていないのだ。

恐らく人生最初で最後の場所のため、それらしい記録写真を撮りたいが一体何にレンズを向ければ良いのかわからない。

とりあえずテキトーに探索していたら、何やらもう先には進めない場所まで来ていた。何だろうと思いGoogleマップで現在地を確認すると、何と予定よりもだいぶ北上していた。検問のおっちゃんにも確認したが、この先は国の重要施設で一般人立ち入り禁止。そのため、ここが事実上の最北端となる。

まあ、最果ての海を見せろとまでは言わんが、やっぱ締まりが悪いな。

一応記念写真も撮ってまた走っていたら今度はポリスに声を掛けられた。まさかいつの間にか禁止エリアに侵入していたのではと下手に出て聞いてみたら、「施設の写真を撮り理由を聞かせてくれ」とのことだった。

最北端の土地に関心があり、あとで写真を見てこの施設の役割を調べ、知識を深めたいと正直に話したらフツーに納得してもらえた。話のわかる人でよかった。

 


他位はホテルやガソスタなどを見たが、とにかく、硬く冷たく重く、暗い…。デッドホースはこんなイメージだ。

少なくともここは町でも集落でもない。四角のコンテナばかりの建物と重機の数々を見て、北極調査隊のベースキャンプの昭和基地を思い出した。

 


予定では一泊でもしようと考えていたが、こんなトコいくら貴重な場所と言っても長居する理由も気力も湧かない。ガソリン入れて(1ガロン7.5ドル)、12時半ごろ立ち去った。

 


帰りはブッ飛ばした。アベレージ90kmでダートもカッ飛ばして行ったが、天気も良くなってきて実に気持ちが良かった。

アラスカの原野と山々に、雲の隙間から光降り注ぎ、湖面にも反射してキラキラ輝くその光景は、この旅の中で最も美しい景色となった。

中々酷い天気の日も多かったが、大事な場面ではしっかり良い景色に巡り合える。こういうところは本当に恵まれていると思う。

ほぼ休憩なしで400km走り、19時にCold  footに帰ってきた。

 


ソッコー設営して水補給して給油してチェーン調整して注油してバッテリー類充電してとテキパキ動いて、最北端到達の祝い飯はカレーON目玉焼き。食後はお待ちかね、1万km、ジャスト一ヶ月封印されていた水野家からのプレゼントのスキットルを解放し、カツオスティックとキングサーモンジャーキーと一緒に日本酒を頂いて祝杯とした。9ヶ月の旅の苦労や楽しい思い出を肴に、母国の酒をアラスカで。走ってきて良かったな、ほんと。

 


もう、帰り道だ。あと3週間、4000kmも走ればバンクーバーへ帰り着く。もう、帰り道なんだ。

 


デッドホースでは感傷に浸ることはそうなかった。やはりただの目的地だったのだ。

俺にとって大切だったのは、目的地に辿り着くことではなかった。目指す旅の過程こそが大切だった。

そしてその末に、アラスカで自分の答えを見つけること。それが全てだった。

 


大きな区切りを迎え、気持ちももう既に日本での旅に向いているが、帰り道で気付くこと知ることもあるだろう。

そしてまた、ここで気を抜くやつが死ぬ。ここからが正念場だ。最後の最後まで油断せずに。

 


今日も素晴らしい一日だった。

 


走行距離 462km

金 ガス5000

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優秀な防寒装備であっても底冷え対策を怠ると意味がない。エアマットの下に適当な衣類を敷いて全力で断熱する。
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綺麗に食うなあと感心する。
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バラバラになったムースの死骸。
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鳥と人間の足跡。
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認めたくなかったが、どうみても肉食獣の足跡。熊の足跡とは明らかに異なる。コヨーテだろうか。
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血糊のベッタリと付いた石ころ。ここで何があったのか想像が及ばない。
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泥塗れの俺たち。もう少し頑張ろうな。
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俺は北極圏でルアー投げたんだな。ボウズやったけど。
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やたら落ちてて恐怖したが、あとで鳥の糞だとわかった。こんな細長いのをするのか不思議だったが、よく見ると鳥の糞特有の尿が排出されて白くなった部分がある。
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看板を頼りに進む。目印となるものが全く見当たらない。
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俺の人生の最北端到達。これ以上北に行くことはもう無いだろう。
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デッドホース空港。

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デッドホースの駐車場は何故かこういった作り。ワイヤーロックを車に固定するようだが、何故?
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目を疑うガソリン価格。中央のコンテナの中に機械があり、そこに使用するガソリンホースの番号を入力してカードを差し込み、給油可能となる。
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なんかちっこい寒地らしい鳥。
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看板見て帰り道となることを意識する。
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遠くまで来たなってやり取り。
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水たまりにトラウトと思われる稚魚。増水時に取り残されてしまったのかな?
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俺はこの先、これ以上の自然を見て立ち尽くすことはあるのだろうか。
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ダートをブッ飛ばしたとしても荷崩れはなく、ちょっと前にズレるだけ。エンデュリスタンの装備無しでは絶対にここまで来ることはできなかった。
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祝い飯。水野家で日本食を思い出してからというものの、米の魔力から逃げることはできない身体になった。
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このために生きてるんだよなあ。
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穏やかに一日が終わっていく。