ただの男がバイクで世界一周を叶えるまでの記録。

高校生からの夢、バイクで世界一周を叶えるまでの記録をまとめたブログ。旅の理由、決断に至るまで、お金のこと、旅の準備、旅の様子など、考えうる全てを後に続くライダーのために残したいと思っています。

【Day265 Coldfoot〜Deadhorse】北極圏

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8月14日(月)晴れ時々雨

 


21:28 デッドホース30km手前ダルトンハイウェイ川岸

寒い。右手に持つ万年筆もよく冷えている。テント内で吐く息が白い。

晩飯で飲んだショウガ湯が少しでも効いてくれれば良いが。

 


今朝は7時起床。朝飯にコーヒーとクッキーを頂いてゆっくり支度した。

夜中は少し大粒の雨が降っていたが、早朝には過ぎ去ってくれたようだ。

水を補給しようとビジターセンターへ行ったら昼から開館でミスった。ガソリンもだが、こういう命に関わる物は補給できる時に確実にしておきべきだ。反省。

 


コールドフットは10時に出発した。いきなりアスファルトに変わり「このままずっとそうかも」と期待したがすぐにダートに変わり、それはこの野営地まで続いた。

 


前半は雨に苦しめられた。早めにカッパ着ていたから大丈夫だったが、ダートの泥を全身に浴びて泥まみれになった。セローも職人がコーティングしたようにびっしり泥に包まれ酷い有様だ。ホワイトホースに戻ったらキレイにしてやろう。

 


途中の工事区間でもペースを乱された。先導車に着いて行くのはいつも通りだが、なんと30kmもチンタラ着いていくハメになった。前のダンプの土煙に突如現れる深い砂利道にと、散々だった。

 


それら以外は、走りも景色も楽しめたように思う。

ダルトンハイウェイはどうやら、年々舗装が進んでいるらしい。体感では、約700kmのうち300kmくらいがダートといった具合だ。帰り道で測ってみるか。

 


そのダートは聞いていた通りかっ飛びダートで、時々ポツポツと現れる穴ぼこや工事車両による盛り土を躱せば、下手クソでもアベレージ70km近くはトバせる。

かと言って、ここで気を抜くと死ぬため、スイッチのON-OFFは冷静に判断して切り替えている。

 


景色は完全に昨日の前半までとは打って変わって、アラスカの原やと荒涼とした山々が変化しながら姿を見せてくれるようになった。

中でも、あの赤と白のススキと黄色とオレンジの原野の美しさには、再び立ち尽くしてしまった。一体どうやったらあんな色になるのだろう。全ての道で、あの色の原野はあそこだけだった。

 


また、あの動物はジャコウ牛だろうか。大きな角の生えた、茶色の長い体毛の牛を見かけた。遠くから見たら岩のようで、近くに来てやっと生物だとわかった。

だだっ広い原野に一頭だけ孤独に居たが、何をしていたのだろう。俺の存在に気づくと、長い毛を揺らしながらのそのそと遠くへ歩いていった。

 


デッドホースまで残り100kmの地点から、途端に厳しい寒さに襲われ、少しでも風を避けようとセローのタンクに突っ伏すようにして走った。

このまま町についても雨かもしれない。それなら今のうちに設営したい。でも今日着いた方が気持ちが良いかもしれない…。

葛藤しながら走り続けていたが、川辺に良い場所を見つけてしまい、もう寒さも限界のため野営した。

川でルアーを投げたが全く反応なし。寒いためメット被ったまま釣り歩いた。

 


川辺には獣の足跡と、恐らくムースの食われた後の死骸がバラバラになって横たわっていた。もうテント張ったしな…。明日生きているだろうか。

食い物は道路の標識にぶら下げ、セローで逃げる体勢も整えた。

 


ということで、ゴールは目前だ。何となく日本が盆の内に到着したかったが、仕方ない。明日は気持ち良くゴールして、今度は帰路に着くことにしよう。

 


今日も素晴らしい一日だった。

 


走行距離 385km

金 ガソリン1800

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持っててよかったモンベルのコーヒーフィルター。使い方としては絶対に正しくないが、黒くてちょっと香りがあればいいんだ。
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人間の支配域で安心して寝られる幸せを久々に噛み締めた。
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アルカトラズの囚人用カップを完全に気に入った。煤は付くが、こんな使い方もできる。
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前室は大体こんな感じ。

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でかいカラスが散歩している。あんな大きいの日本では見たことないが、ワタリガラスだろうか。先日も彼の仲間が一緒に暫く走ってくれた。

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レギュラーガソリンとディーゼルを間違えたら終わる。必ず受付で確認する。
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ロッジ。
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ヘリポート。
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走行中ノールック撮影。アラスカの自然にセスナは似合いすぎる。
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ちょっとずつ太陽が顔を出してくれた。
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禿山。
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ここも禿山。採石場でもなさそうだが、何が要因で植生に違いが出るのか。
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雨の後のダルトンハイウェイのダートを走る。
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お互い汚ねえなって。
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激しいアップダウンが連続する。
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鮮やかなアラスカの原野が再び姿を見せ始める。
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綺麗だからちょっと拝借。
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後で調べたらジャコウ牛とわかった。冒険家の角幡唯介さんの極夜行で印象的だった動物。
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生き返るとはこのこと。とにかく食わねばならない。ジョイフルのスープバーも行きてえな…。