2022.8.27
19:12 書斎にて
今日は一日中英語漬け。
出発を決めてから、過去最高にやる気スイッチがバッチンバッチン入っていく。
スペイン語もかじる。
「ありがとう」「こんにちは」と「美味しい」は覚えた。
決断した。
11月中の出発を目標に、動き始めた。
旅の始まりは南米、チリ。
サンティアゴで格安中華製バイクを手に入れ、ボロさと付き合いながら南米を可能な限り走る。特に「大陸一周」などの称号に関心はなく、ただ流れる雲の如く自由に走る。
そして2023年5月。
次はカナダへ飛び北米大陸の旅が始まる。
バンクーバーでバイクを手に入れ、最も憧れを抱く地であるアラスカを目指す。
2023年9月。
オーストラリアを最後の大陸とし、旅は終わる。
全てBuybackだ。
拘りを見つめ直し天秤に掛け続けた結果、この選択ができた。
この世界に確かに流れる『もう一つの時間』をこの目で確かめること。
紙の地図に旅の軌跡を描くこと。
これらだけは絶対に貫くために、相棒のセローの輸送は一旦は諦めることができた。
だが、セローは必ずユーラシア大陸に連れて行く。そのために師匠も協力してくれている。
決断は突然だった。
風邪でフラついている時にふと、心が動いた。
風邪の熱に浮かされたのか、気紛れに天啓を受けたのかはわからない。
この数ヶ月、数え切れないほどの葛藤を繰り返してきた割には、あっさりとしたものだったのは覚えている。
11月中出発なら、余り時間は残されていない。
8月15日、うだる身体とは対象的に頭は冴え、看病を受けながら、与えられた書斎にて必死に現状把握と情報収集を始めた。
とにかく頭の中のゴチャゴチャを手帳に書き殴り、打ち倒すべき敵として分析を始めた。
旅の先輩の協力も得られた。ありがたい。
現地で購入の手助けをしてくれるバイク屋さんも見付かった、よっしゃ。
あ、パスポート作ってない、やべえ。
国際線初めて乗るってのに、乗り継ぎ2回とか無事に辿り着く気がしねえ。
初の海外で英語すら通じない土地、やべえ。スペイン語全くわからねえ。
ワクチン接種3回目打ててないからやべえ。在チリ日本大使館とやり取りしたら何とかなりそうだと知れた、よっしゃ。
中華製バイクでも何とかできるか?師匠との修行を信じろ。
南米北米オーストラリアのミシュランロードマップでの卓上旅行も始まった。本当に走るのか、ここを。
宝物を見つけてしまったとき、価値は移ろい、旅は終わる。
その抗いがたい現実に直面し、秋田での生活は人生で最も自身の内面と向き合う時間となり、それは地獄とも呼べる時間となった。
この地で旅を終え、日常に戻ることさえ本気で考えた。
年齢による焦りも生まれ始めた。
旅よりも大切なものを知ってしまった。
だが、それでも心は、憧れを選んだ。
本当に行くのか?
数カ月後、海の向こうに俺はいるのか?
行く必要があるのか?
行って走って時間と金を捧げて、見返りは?
当初の理想とかけ離れた旅の末に、納得は得られるのか?
俺は馬鹿だし、死んでしまうかもしれない。
今ならまだ日常に戻れるのではないか?
私は今、十代の頃より本で読んで息を呑まされてきた旅人の旅の序章、出発のあの姿と同じ境地にある。
この感覚が欲しかった。
この、人の心を知りたかった。
今、憧れた物語の主人公になる時が来た。