1月17日(火)晴れ 15℃〜27℃
9:20 野営地
8時起床。テントを片付けながら昨日のメタボンさんとの話を思い出していた。俺が伝えたいことは伝えられただろうか。そう考えながら。
日産寮の6畳の和室で考え込んでいたこと…迷っていたこと…。
一つは、山は逃げるということ。この考えは昔から1mmも変わらない。今自分がこうしたキラキラした夢(山)の中にいて気持ち良くなっているから適当なことほざいているわけではない(いや、この場合気持ち良くなってるやつこそ、山は逃げないなんて言うのだろう)。
山は逃げないなんて、何かに自分の在り方を賭けて挑んだことのない人間が無責任に他人に放つ、独りよがりな言葉でしかない。何度か似たような表現でこのように言われたことがあるが、「ふざけんなあんたに俺の何がわかる。俺が何を捧げてきたか知らないあんたに何がわかると言うんだ」という気持ちで一杯になった。悲しい話かもしれないが、そんな言葉を他人に掛けても何の慰めにもなりはしない。
その言葉が慰めになり得るとしたら、それはその行動者にとってのとても大切な人や信ずる人が、その言葉を掛けた場合のみだろう。しかしその人たちの顔を今思い浮かべても、山は逃げないなんて言葉を放つとはやはり思えないが。
そしてそれ以外の他人に言われて慰めになるとしたら、それは山と呼べるほどのモノではなかったと言うことだ。
確実に言えることは、行動者と血よりも濃い絆のある人間や、行動者の心の師とも呼べる大きな存在の人間以外が、山は逃げるなどと他人に掛けて良い言葉ではない。
だから俺は同志達にも、これから夢の実現のために闘うだろう若い世代にも、絶対に嘘は吐かない。過激な考えで人を傷つけるかもしれないが、俺は嘘はつかない。山は逃げる。この一分一秒の間にも。
もう一つ思い出したことがある。
それは、「コロナ禍後の世界を旅して、俺は楽しむことができるのか」と、延々と葛藤していたこと。
「俺が見たかった姿から大きく変わってしまった世界を旅して、俺は本当に納得を得られるのか?」「もし納得を得られなかったら、自分に失望して終わるだけではないか?であればこれ以上足掻く意味はあるのか?」
日本がコロナによって大きく混乱し始めた2020年春。日産自動車九州も3月31日から5がつまつまで工場が停止し、約2ヶ月間自宅待機となった。その間、旅のためにやれることを模索しながらも、そう悩みながら過ごしていた。あの時は笑うしかなかった。
だからこそ今同志達に、過去の自分に伝えたい。俺は楽しめていると。
日本人だから日本と比べるが、やはり海外は日本と比べてコロナの影を見ることなくコロナ前の元の暮らしを取り戻しているように見える。だがあくまで、ただの旅人である俺が行動する範囲で、だ。
それに俺自身は、ということだ。旅人によって旅のスタイルは違うし、旅に求めているものも違う。
だから言いたいのは、俺は存分に嘘みたいに楽しめていると言うこと。俺の旅のスタイルに似た人や、求めているものが似ている人がいれば、俺は毎日楽しくてたまらないよと伝えたい。
と言ってもやはりこの葛藤は難しいもので…。自分で言っておきながらなんだが、顔も知らない会ったこともない他人の言葉など何の足しにもならないのが現実だろう。
だからもし、こういった心の問題で苦しんでいる誰かがいるとするならば、その人の背中をそっと優しく押してくれるに相応しい誰かに出会ってほしいと願いたい。俺の場合は高橋さん(師匠)がそうだったから。
さて気付いたらもう10時だ。こう言う気付きなどはいつもバイク乗ってる時などすぐに記録できない状況で浮かんでくるから厄介だ。もう洗濯物も乾いたろう。10時半には出るか。
朝飯はスニッカーズみたいなの。夏の暑さで溶けてしまうのが難点。
自慢のペグとケース。ペグに赤いパラコードを紛失防止の目印としてと、引き抜き易さの向上のために付けている。
バッテリー類の交換も朝の作業。ミラーレス一眼は大体三日もすれば交換している。
大木の上で書く自分を記録。
13:58 La Junta 10km手前のお店
運転中蜂が眉間に飛び込んできてそのまま刺された。強毒の蜂じゃないかとヒヤヒヤしたが、蜜蜂だったようだ。野営地でもたくさん見かけたしな。
今はオアシスで至福のときを過ごしていたとこだ。
フードトラックでホットドッグのイタリアーノを頼んだらお釣りが明らかに足りない。どゆこと?と聞くと、ハンバーガーのイタリアーノと勘違いしていたようだ。今度から気を付けよう。
食いながらチャリダーやテネレ1200のライダー達と談笑していた。俺の風貌がとてもバイク乗りの旅人らしくて凄く良いと言われたが、褒められてるってことだよな?ジーンズにTシャツ、ジャケットはマウンテンパーカー、革の手袋に革のブーツと古いスタイルだからかな。
そう言えばチリで出会うバイク旅人でこんな格好で走る人はまだ見ていない。となるとアレックスの革ジャンにミリタリーパンツに革手袋にミリタリーブーツのスタイルも、この国ではマイノリティなクラシックスタイルなのかな。
道中の景色。山脈が横に広がる。
またボウズ。
でかいイタリアーノ。
ライダーにチャリダーに集まる。海外ライダーのほとんどはこんな一張羅で走っている。
オアシスには子犬の群れがいた。
もしやふれあえるのではと彼らがいる家の近くにそっと見に行ったら、フツーに放し飼いにされている!!ズームレンズでその様子を撮っていたら1匹に気付かれ、すると全員こっちを凝視して動きが止まった。すると次の瞬間!!
桃源郷はここにあり。
子犬の群れに襲われてみたいという小さな夢が、また一つ叶った…。Goproに写真にスマホ動画にとしっかり記録も残した。最高だった…。
三連コンボ…可愛すぎる。目が合うと突っ込んでくるので、焦点距離を保つのに苦労した写真達。犬や猫のサイズは単焦点の45mmと相性がいいな。
また一つ小さな夢が叶いました。
— 🇨🇱Yushiro Nishimura🏍 (@fasasabi_LWR) 2023年1月17日
動物番組とかでありがちなアレです。
子犬の群れに襲われてみたかったんです。
ミーコ、コムギすまん。兄ちゃんは犬も大好きなんよ。 pic.twitter.com/YPZQ9wDjXQ
最後に橋の下の美しい川に釣りに出かけたが、またボウズだった。でも景色がすごいから日本でのボウズのようにひどく残念な気持ちにもならないんだよな…。毎回新しい釣り場で新鮮な気持ちでできるってのも理由の一つだろう。
さて、あと一回モフってから行くか。
大木の上に乗って釣りをするのも日常的になってきた。
釣り場の色んなギミックで遊ぶのも面白い。
23:27 Puyahuapi
18時ごろこの街に到着し、もう遅いし野営することにした。
湖畔に設営し、コーラとポテチをキメながら今期アニメのヴィンランドサガを観賞。ブログ作業もこなして、沈みゆく夕日を眺めていたら……あれ、水面が迫ってきている?
ここは海だった。俺はアホか。
よく見たらその辺の岩にフジツボが付いているし、奥まった入江というだけで立派な海の一部だ。雑草が海水に沈む場所でも元気に生えているから騙された。恐らく汽水域だからだろう。
話しかけに来た地元の老紳士に「ここは沈むかい?」と聞いたが、彼は大丈夫だと。いや、これは恐らく死亡フラグだと判断し、過去にない早さで撤収した。
危なかった…。もし早くから酒でも飲んで泥酔して早くに寝てしまっていたり、満潮が深夜で潮の動きに気付かないまま寝ていたらと思うと…。本当に笑い話ではないな。
今生きているのは偶然と言える。二度と同じ過ちは犯すまい。
寝る前にカメラからスマホに写真を取り込んだが、昼間の子犬達は本当に死ぬほど可愛かったな…。良い写真も撮れた。ねる。
山水をいただく。水暫く買っていないな…。
この日に初めて、空気穴に弁があることに気づき、一気にこのエアマットの素晴らしさを理解した。
実際これを海だと地図無しで判断できる人は少ないだろう。フジツボがなかったら無理。
夕マヅメだし投げてみたがダメだった。
元の野営地を見に行ったら今にも沈みそうになっていた。
走行距離 159km
金 食糧1,271 ガソリン1,091