ただの男がバイクで世界一周を叶えるまでの記録。

高校生からの夢、バイクで世界一周を叶えるまでの記録をまとめたブログ。旅の理由、決断に至るまで、お金のこと、旅の準備、旅の様子など、考えうる全てを後に続くライダーのために残したいと思っています。

【Day56 Hornopiren〜Chaiten】船旅思案録

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1月15日(日)晴れ

9:06 Hornopirenフェリー乗り場カフェ

6時半起床。結露でビッショリのテントを公園の健康器具を使って乾かし、フェリー乗り場へ。折角の船出のため、少し贅沢してカフェでカブチーノとエンパナダスを頂いて朝飯とする。カフェのお姉さんが、「ケタール?」と言ってくれたので、「ムイビエン!ケタール?」と返したら「ムイビエン、グラシャス!」と返ってきた。なるほど、最後にグラシャスを付ければより良いのか。アレックス達が教えてくれた挨拶をやっと実践で使うことができて嬉しかった。

鳩羽にはチャリダーにライダーに、様々な旅人達が集まってフェリーの到着を待っているところだ。飛行機乗る時もそうだが、同じ目的を持った者達が1箇所に集まるのは楽しいものだ。案外コミケとかの楽しさもこれと同じだったりして。

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朝から長年お世話になった思い入れのあるエアマットとのお別れ式を済ませた。これはサイズ比較。さすが高いだけあり同サイズでもコンパクトだ。
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空気の入れ方。これを理解したのはこの2日後。
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ベッドメイキングするとこんな感じ。ちょっとだけ長くなった。
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空気漏れの箇所をナイフで切って確かめてみたら、やはり剥離して表面とウレタンの間に空気が入っていたようだ。
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まともなとこも切ってみたら、ピッタリ綺麗にくっついていた。
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さよなら…。2014年に先輩方と友人達がお金を出し合って誕生日にプレゼントしてくれた、思い入れのある道具だった。

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テントからの景色。
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毛皮は丸めてドラムバッグに入れることもできる。
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朝日でガンガン乾いていく様は爽快。
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このメニュー表は凄くありがたい。色んな国の人間が集まる場所のカフェだから気を遣ってるのだろうか。
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これで千円。まあ場所代も含めればってやつだ。
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カフェの様子。みんなこれから始まる船旅にワクワクしてるのが伝わってくる。

 

 

11:32 フェリー客室内

さっきは突然インスタライブを思い付いて始めてしまった。懐かしい人たちから反応があって嬉しかった。ママさん達ともちゃんと会ってから出て行きたかったんだがな。けんと飲むのも帰国後の楽しみの一つだ。おすすめの居酒屋で頼むぜ。

インスタライブは、「野糞の話はまた今度」と言って終了させたのだが、すぐに懐かしい人から「野糞話楽しみにしとるぞ」とLINEが来た。けいすけ…先輩の方のけいすけさんだ!!すぐに電話してお互いの近況を話した。長崎に戻って来られたと言うので、来年帰国後NiAS同窓会を頼みますと言ったら、任せろと言ってもらえた。この頼もしさ、久々だぜ。そして海外に居ても話題に上がった本間さんは幸せ者だ。絶対仕事辞めない方に10000チリペソ賭けるぜ。

 

話していたらフェリーの出航時間が来たため、急いで会計してバイクに戻った。インスタで今まで見てきた、絵に描いたようなアドベンチャーライダー達に並んで乗船した。

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一番左に並んで、何だか俺が先頭みたいになって笑った。

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日本でもよくお世話になるタイプのフェリー。
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車両甲板。日本のように丁寧にロープで固定してくれないので、倒れないようにドラムバッグとバックパックをリヤキャリアから下ろして、ドラムバッグを支えに使った。サイドスタンドがちょっと短くて、駐車場所に気を使うのが悪いとこだ。
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みんなニコニコしている。バイクから伸びている謎の棒はInsta360だった。運転していて目障りすぎないか?

 

船が出港してから90分経ったが、船の上に乗っているのを忘れるくらい揺れもなく快適に過ごせている。客室内が何故かクーラーが効いて寒いが、座席にもテーブルが付いて眺めもいいし、なんと電源まで貸してもらえるのだから文句はない。トイレも沢山あり清潔で、売店もあるから後でポテチとコーラ食おうかな。圏外のため日記も捗るというわけだ。

折角の時間だし、何か特別なことでも記録しておくか…。

 

旅人の心情

さっきの白濱さんとのやり取りで思うこともあったので、少し深掘りして記録しておきたい…。

 

白濱さんは福岡に住んでいる時も会って旅の計画を話して応援もしてもらえたし、コロナ禍になってからも何度か電話やビデオ通話をしてお互いの近況を話したりさせてもらっていた。そんな先輩に、出発前も、旅が始まってからも連絡することができなかった。

それは何故か。

 

それは、単純に遠慮していることが一つ。やはり家庭のある友人知人には連絡しにくくなるもの。

それは何故か。

 

それは、自分の旅の話を聞く余裕など無いのではないか、と勝手に考えてしまうからだ。

何故そう思うのか。

 

これは少し飛躍した話かもしれないが、それは、自身の旅など現代社会では遊びにしか過ぎない、価値のないものだからだ。アレックスと話したように、俺たちは一般的に普通と呼ばれる、多くの人達が歩むだろう生き方とは異なる道を歩んでおり、それはとても特別で面白いものだ。

しかし、それは実際に体験している当事者だから言えることであり、他人から見ても俺たちが内に抱える葛藤や信念などは見えないし感じることもできないのだ。

それは俺たちが人間である限り仕方のないことなのだ。悲しいことではない。

 

だから俺は記録を残す。後に俺が神の視点で過去を振り返るためでもあり、リアルタイムに他人に読んで見てもらうことによって、普段の会話ではとても伝えきれない思いを伝えようとする。

何故伝えたいのか。

 

それは当然、大切な人たちには自分の熱いものを、旅に込めた思いを知って欲しいからだ。その人達が大切だからだ。理由などその一言で十分だし、そもそもこの欲求は理屈で表せない、人間として当たり前のものだ。

 

話を戻そう。

そう言った理由で、大切な人に言葉を届けられない旅人も多いという話だ。

 

もう少し話をしようか。

 

 

準備期間も、旅

準備期間内の4年間で、掛けられて最も嬉しかった言葉は、「今までよく頑張ったよ!おつかれ!」という、出発の日程が確定したことを報告した際に友人がくれた言葉だ。一見するとまるで旅から帰ってきたかのような言葉だが、その言葉は当時の私が何よりも欲していた言葉だった。

 

何故なら、それほどに、その準備期間の4年間が長く長く、大変なものだったからだ。

余りにも大きな困難が、一度ならず二度三度と起きた。その度に同志達と励まし合い、計画を見直し、果ては一から立て直し、次々に生まれる葛藤にケジメをつけてやっと、出発の日が決まったのだった。

だから嬉しかった。「そうだ、俺は頑張ったんだ…」と自分を素直に褒めることができた。理解してもらえたようで、救われた気がした。

だから私がもし、これから同志を見送ることになったら、同じ言葉を心からの賛辞を込めて届けたいと思っている。

これからその機会を私に与えてくれるであろう同志は現時点でも何人かいる。その全員が、例外なく苦しんでいることを私は知っている。一生懸命、自身の夢にケジメをつけようとしている。このコロナ禍で何度も挫けそうになりながら…。

 

大変なのだ、夢を見続けるということは。

「バイクで世界を走る」という行為は、金と時間さえあれば叶えられるものだから尚更…。

呪いで終わらせないために常に情熱を持ち続けるのは、本当に本当に、旅をすることの一億倍大変なのだ。彼らは頑張っているんだ…。

だから私は、彼らの出発が確定した時は「お疲れ様でした」と、まずは一言届けたい。

 

 

 

記録を残す理由

この点についても深掘りしたい。

前述したように、大切な人たちに自分の何かを感じ取ってもらえたら嬉しい、というのがまず一つ。

二つ目。これは日記、ブログについてだが、私の記録を読むことで「こんなバカでもこんな旅ができるのか」と思って欲しいからだ。

海外バイク旅の世界を深く知る前は、そのような旅ができる人たちは、私なんかでは到底敵わない、神に愛された超人達と勝手に思い込んでいた。英語も当たり前に話せてお金も持ってて…。

だが、そんなことはないと、雑誌で藤原かんいちさんの存在を知ったり、WTN-J(ワッツー)の記録を集めた海外ツーリング読本を読んだり、リヤカー旅の吉田正仁さんの本を読むことで知った。

その普通の人間が何とか頑張って旅をしている姿に私は大きく勇気付けられ、旅に出る自分を具体的に想像できるようになってきた。

だからブログのタイトルは「ただの男がバイクで世界一周を叶えるまでの記録」なのだ。ただの男なのだ。普通の人間が普通に旅をする姿を見てもらうことで、「俺にもできるかもしれない…!」と思って欲しいのだ。

それが私が、準備段階の時点からブログを書き続けている理由だ。

 

 

日記をそのままブログで公開する理由

個人の日記こそ極上の記録だと思っているからだ。

以前触れた神々の山嶺における羽生丈二の手記を読んでそれは確信に変わった。だから私は他人を知るためには他人の日記を読むのが一番だと思っている。嘘偽りなく飾らず、他人の目も意識していない個人の人生の記録は、この世で最も面白い読み物の一つだと思っている。

だから私は日記を公開する。他人のを読みたければまずは自分から公開するのが筋でもある。

そうすることで、それが実際に他人の目から見て面白いものなのかどうかを旅が終わった後に知ることができる。

私が目指すのは、神々の山嶺の羽生丈二が命の限り書き残した手記が持つ「心の熱」と、『Read Dead Redemption』の主人公アーサー・モーガンが、新しい時代に移りゆくアメリカ西部を彼なりに静かに見つめていた「世界を見る目」である。

 

 

23:30 Chaiten 砂漠野営地

今日2回目のフェリーを降りた後は、街に着くまでまさかの全てオフロード。

何度か危うい場面もあったが、役60km完走できた。

街に着いたのは18時。もう遅くなるし、ガソリン入れてポテチ食ってビール飲んで野営することにした。通信も5Gだし、明日のメタボンさんとのLIVE配信は問題ないだろう。ねる。

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出港。この瞬間はやっぱりワクワクする。
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絶景が延々と続く。
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険しそうな山。
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自撮りするおばちゃん達は日本と一緒だな。
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様になってる兄ちゃん。
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何やら絵を描いていた人。いいね。
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ダニエル・クレイグ似のライダー。ヨーロッパ系の顔はほんとかっこいいね。
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これも自撮り。
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こんな感じでご丁寧に充電スペースが用意されている。
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二度見した。人形かと思った。

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暖かい外でジュースとポテチをキメる。
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仲良くなったアンドリューと。写真家らしく、俺のOLYMPUSのカメラを素晴らしい素晴らしいと褒めてくれた。

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彼はロイヤンエンフィールド乗り。渋い。
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ん?と思ったらKOMINE!どこで手に入れたんだろ。

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下船。ヒッチハイカーもたくさん乗っていた。
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チャリ乗りは尊敬してる。頑張れ〜。
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なんかようわからんがとりあえず記念撮影。f:id:fasasabi:20230118101947j:image
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雄大な自然の中をひたすら走った。街の看板が見えた時は安心した。

テントに謎の動物の毛がついていたが、これは馬のものでは?

 

 

走行距離 89km

金 カフェ1,097 食糧763

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