おはようございます、西村雄志郎です。
魂シリーズ第二弾です。
「そんなんいいからお前さっさと企画書完成させろや」って話ですが、この本を先に紹介しておかないと旅のゴールをなぜそこにしたのかというのが伝わらないかなと思い、先に紹介いたします。
故・星野道夫氏
皆さん、昔日曜日の夜にあってた『どうぶつ奇想天外』は覚えていますか?アラスカやカナダに生きる野生動物、特にクマの映像などが流れていたのを私もよく覚えていますが、あの映像や写真を撮っているのが星野道夫氏です。彼は動物写真家であり、晩年はアラスカに住まいを移し、その美しくも厳しい大自然の姿を現地で生活することでより深く、穏やかに写していました。
しかし残念なことに、番組の撮影中にクマに襲われ1996年8月に亡くなられました。今もご存命なら69歳になられます。生きてらっしゃれば是非ともお会いしたかった。まことに残念です。
星野氏が過ごしたアラスカを追体験する
エッセイ集となる本書を通して、いかにして星野氏がアラスカの自然の中でどのように感じて、思って生きていたのかを読者は体験することができます。
思いがけないムースの群れに遭遇して興奮したり、カヤックを出して秘密の入江に出掛けクジラに出会ったり。恐らく何気ない日常の描写なのでしょうが、初めて本書を読んだ際サラリーマンだった私はそのような世界が、生き方があるのかと、遥か彼方のアラスカの原野に思いを馳せました。
もうひとつの時間
様々なテーマでエッセイをつづられていますが、私はその中でも「もうひとつの時間」というものに最も衝撃を受けました。
「私が東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない」
星野氏の取材に同行した、東京で編集者の仕事をされている氏の友人の方が旅から戻って言った言葉です。
最後に星野氏は次の言葉で結びます。
「僕たちが毎日を生きている瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい」
「俺がスーツ着てビルの中で働いているこの時間に、彼方アラスカの入江でクジラが飛び上がっているかもしれない・・・?」
当時25歳だった私は衝撃を受けました。
今までの人生でそのように考えたことがなかったんです。しかし言われてみればそれは当たり前のことで、時間は皆平等に同じように流れているため、コンクリートジャングルの中でスーツ着て汗流す人間も居れば、大自然の中で狩猟をしている人間もいて、人間など立ち入ることもできない場所で悠久の時を生きる生き物も居る。
本当に、考えたことがありませんでした。
それから私は星野氏の熱に充てられたかのように、「本当にもうひとつの時間が流れているのか確かにこの目で確認したい」と思うようになりました。
また、精神的にきつい時でも、アラスカで生きるクジラやクマなどの動物のことを思うことで、「なんともちっぽけな苦しみか」と自分のスケールの小さなことに気が楽になりました。
星野氏が言う「もうひとつの時間」。これを今狭い社会で生きる私が日常的に想像するだけでこんなにも生きるということに対する考えが、世界の見方が変わった。
であればその風景をそのまま目にすることができたら私の人生はこれからどのような見え方がするのだろうか?
旅の最終目的
以上のことから、私の旅の最終目的地はアラスカ:ダルトンハイウェイを走り抜けた先にある最北端の町デッドホース。
最終目的はアラスカでクジラのブリーチング(海面から飛び上がる行動のこと)を目にすること。
これらを遂げることで私の心の旅を完遂させてあげられるはずです。
もうひとつの時間を目にすることでこれからの人生が、世界がどのように見えてくるのかを知りたい。
全てが終わり再びただのサラリーマンになったとしても、爺になって体が動かなくなり二度と旅に出られなくなった時にも、この瞬間に人間など関せずに雄々しく生きる生き物たちがいることを感じて生きて行きたい。
終わりに
以上です。アラスカが一応は旅のゴールとなります。
星野道夫氏はいくつも著書がありますが、その中でも本書は短編集となるためサクッと読めるのもあり初めての一冊にはお勧めです。
エッセイ集と聞くとあまり面白いイメージはないと思うんですが、これはまた別次元ではないかと・・・。
旅に一冊持って行く本があるとすれば、わたしは恐らく本書になるかと思います。
前回の鋼の錬金術師同様、私の精神構造に大きく影響を与えた本です。
アラスカの自然に興味がある人もない人も是非読んでいただきたい。
何かに悩んでいる方であれば、きっと気持ちが軽くなるかと思いますよ。
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