5月18日(木)晴れ
22:03 ホステルキッチン
7時半起床。急いで着替えて手続きへ。
ここもまたトラウマのある場所だったが、クリスチャンの指示通りに動いたら30分で完了。
あれ、クリスチャンのアドバイスで上手くいったの初めてじゃね。なはは。
集合の10時まで思わぬ空き時間ができてしまったので近くのカフェで朝食にした。サンティアゴでの生活はもう合計で40日を越したが、カフェに入ったのは初めてじゃないか?腹痛でトイレに駆け込んだが、当たり前に便座が付いている。そしてキレイ。あっはっは。ほんと笑える。
表に出て来て列整理してた姉ちゃん、出発前に根気よく付き合ってくれた人だった。
玄関から入ってすぐ右手の窓口で。
書類を2種類、計3枚ゲット。
朝から奥の席でパーティーしてた。会社の仲間かな?
んで10時に、今度は遅刻なくNOTARIAで集合して、ファクトゥーラが無いとかRUTの紙が紛失したのに放置していたツケがここに来て回ってきたりと冷や汗もんの場面も何度かあったけど、2時間くらいかけて無事に手続きは完了した。
念には念を押して受付の女性に「No problema?」と聞いて「No problema」と返事もらったのを動画にも収めた。万が一ミスっててまたチリまで来いとか言われたらたまらんからな。
ダイアナとアレハンドロの提案で最後にヴォラーレと写真を撮った。俺から言おうと思ってたのに彼らから言ってくれて、何だか嬉しかった。
改めて跨ったらやっぱり、しっくりくるんだよな。そりゃそうだ。23,000kmも一緒に旅したんだから。
持って来れなかった新品のオイルとプラグを回収するために3人でカサマッテに行った。
これが本当のラストラン。荷物を積んでいない相棒は羽のように軽く、まだまだ走れるよって言ってるみたいだった。
ほんとお前、日本に連れて帰りたいくらいなんやけどなあ。
名義も変わって実際俺が乗るのはアウトなんだが、最後だから思いっ切り走ってやった。
そしてカサマッテの前で二人に精一杯の感謝を伝え、二人を見送った。
二人の背中と相棒は、一瞬で通りの木立の中に消えて行った。肌寒い秋空の下に、俺だけが一人取り残された。
行っちまったなあ。「達者でな」つって見送った。もう会うことはないだろうからな。それとも、坪井さんとロベルトのような奇跡が待っているのだろうか。
それからは、やっと手に入れた自由を確信し気分を上げ、残りのサンティアゴでの過ごし方を考えたり、ブラジルから来た日系二世の彼と談笑したりして過ごした。
思えば、こんな形でのバイクとの別れは初めてだ。
店に下取りに出すわけでもなく、事故で廃車になって突然別れるわけでもなく、売った瞬間、次のライダーの元に行く。
良いな、それ。ショウルームの端で埃かぶって景色に同化することもなく、またすぐにアクセル捻ってもらえて走り出すわけだ。嬉しいな、それ。
俺はしばしば、物を感情のある生物のように扱う。
そうすることで気持ちよくなってる節もあるし、本気で心があるものだとも思っている。
だって、相棒だ。
俺がアクセル捻ってバイクが俺を連れて行ってくれる。持ちつ持たれつってヤツだ。
だから感謝する。敬意もできるだけ払う。バイクがあればなんでもできる。野営だって二人なら怖くない。二人揃えば俺たちは無敵だ。
初の海外で初のバイク旅。
そんな、普通なら恐るべき条件でも、俺は何とかやれた。
その相棒がお前で良かったよ。
別にクソハイスペックでもなけりゃ、150ccとこの大陸を走るには小さなお前だけど、フツーの俺にはちょうど良い相棒だった。
お前を選んだ時は色んな人に散々無理だと笑われることもあったけど、ほら、な。やってやったろ。見せつけてやったじゃねーか。
あばよヴォラーレ。
その名の如く、お前はまだまだ南米の地を翔ぶように走れる。お互いまだ旅の途中だ。
縁があればどこかの道で会おう。
最高の旅をありがとう。
ここのNOTARIAは初。いつも横目で行列できてるの見てウワ〜て思ってた。
役所勤めの御猫様。あとで外に出て散歩に出て来たのでモフらせてもらった。
何度「No problema?」と確認したかわからん。その度に胸を撫で下ろすジェスチャーして二人に笑ってもらった。
たぶん、将来とても大切な写真になるんだと思う。
総走行距離23,236km。長き旅だった。
達者でな。
金 食糧4700 カフェ800