ただの男がバイクで世界一周を叶えるまでの記録。

高校生からの夢、バイクで世界一周を叶えるまでの記録をまとめたブログ。旅の理由、決断に至るまで、お金のこと、旅の準備、旅の様子など、考えうる全てを後に続くライダーのために残したいと思っています。

【Day105 Buenos Aires】ミゲルの友人たち

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3月5日(日)晴れ 割と涼しい


※アサードから帰宅後書ききれず3月6日の昼に書いたが、楽しすぎて長文になり6日分の日記としてブログに記録するには余りにも情報量が多いため、当日書いたものとして記録する。

 


今朝は10時まで寝て朝食にサンドウィッチとコーヒーを頂いてブログ作業やら。

夕方からミゲルと出掛けて、アサードに使う炭や食材の調達へ。

肉がマジで安すぎる。過去一安い。LA ANONIMAより安い。ガソリンの価格もブエノスに来てからまた150ペソ程度になった。やはり都市部の方が安くなるんだろうな。日本もそうだし。

全部で肉を3kg、でかいチョリソーを10本くらい買った。ミゲルが、いくつも手に持って近くで観察して見比べて選んでいるのが興味深かった。El Calafateで出会った北海道の民のヒロさんと同じようだった。

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DRAGON BALLは国境を越える。
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アンナとロベルトがご馳走してくれたコレ、あー名前何やったか!
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快適な部屋。ご馳走様でした。
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机を手にしたので描きかけだったスケッチをやっと完成させた。トルウィンのキャンプ場の暖炉だが、途中でガストンが目の前に立って本読み始めたから見えなくなったんだよな、なはは。
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アホみたいに安い。魚も安い。どうなってんだ。
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真剣に質を確かめるミゲル。

 


食材と炭調達後、中心街からちょっと離れたミゲルの友人であるフリャンの家に行った。

彼のアパートのベランダにも当たり前にパリージャがあった。アルゼンチンの人たちはパリージャ付きか否かで物件探しをしたりするのだろうか。焼けた肉をそのままパリージャ前でカットするための小さな木製の台も備わっていた。

また、パリージャの焼き台は日本のBBQで使われるような細い焼き網ではない。鉄製の、角度45度くらいに三角に溝のあるものが縦にだけ並んであり、その上で焼くことにより油が溝に落ち、焼き台が若干手前に傾斜があるため、その油は手前の雨樋のような油受けまで流れ、これまた雨樋と同じように1箇所に油を流して溜めて、パリージャ自体を無駄に汚さないで済むようになっている。

こういった面でも、見た目は派手だが非常に機能的でもあるのが実に興味深い。原始的な設備でありながらも、長い歴史の間にアルゼンチンの皆さんの大らかな気質と融合しながら改良を重ねられてきたのだろう。こういう文化について俺はもっと知りたい。


準備をしながらフリャンと話していた。

彼もバイク乗りで、愛車はテネレ250(マジで日本でも販売しろよ)。彼の旅の写真を見ながら、これから俺が向かうボリビアやペルーについて教えてくれた。静かでありながら熱意を持って話す彼だが、そんな彼の性格が現れているのだろうか、部屋には小さくも洒落た感じで旅先で手に入れた工芸品や写真が飾られており、とても旅を楽しんでいるように感じた。旅先へのリスペクトをヒシヒシと感じるのが素敵だ。ベランダには観葉植物も生き生きと並んで、小さなテーブルとイスと置いてあって、彼の拘りを感じ、「こういう都会での暮らしもいいな…」と思わされた。

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めちゃくちゃ良い感じの部屋。こんな部屋に住みたい。
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ちゃっかりベジータが立つ。
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パチモン臭くはあるが、オレンジの壁に映えるね。
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ベランダにはハンモックまであって感動した。男の憧れの一つだ。

 


俺たちが来てからすぐにやって来たルースィアもバイク乗りで、フリャンと一緒に地図を見ながらここは最高だここは危険だと、流暢な英語で話してくれた。この時は俺も英語を驚くほどスムーズに話せた。そしてやっぱり現地の方に直接教えてもらうのが最高だ。日本では敢えて現地のことを調べずにきたが、正解だった。確実だからとかではなく、この時間が純粋に楽しいからだ。わかりゃなけりゃ聞けばいい。たったそれだけのことが、掛け替えのない大切な思い出になる。

そしてなんとルースィもロイヤルエンフィールドのヒマラヤにお熱らしい。スマホの待ち受けにしているヒマラヤを見せて「俺もいつか乗りたいんだ!」つって盛り上がっていた。聞くと車重が200kgある上、シート高も高いらしい。俺も乗れるか不安だ。


炭が熾るまでの間、屋上で夕陽を眺めながら4人でビールを飲んだ。日が暮れ静けさに包まれた街に沈む夕陽もまた美しかった。チリの湖や山々、アルゼンチンのパンパで見て来た夕日とは違う感情。この街の人々の生活が今日も静かに終わっていく、何処とない安堵と切なさのようなものを感じた。

またベランダの空間も好きなんだと気づいた。決して広くはないが、自分の好きなものを置いて、都会のほんの一部分を自分だけの空間にして朝と夕方に街を眺めながらコーヒーを飲む。笑っちまうくらい田舎もんのベタな想像だが、俺はこう言う楽しみがあるだけでも案外都会でも生きていけるのかもしれない。

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決してクリーンな街ではないが、それすらも忘れさせる美しさがある。
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今日集まってくれたのはミゲルの高校時代の繋がりだ。地元の仲間はいいよなって気持ちで、シャッターを切った。

 


追加のビールを買いに外に出たらまた二人バイクの2ケツでやって来た。

彼らはアランとララ。ララは元アメリカ人でテキサス出身だったかな?10歳かそこらでこっちに越してきて、今は当たり前にスペイン語もペラペラ。凄えよ…。元々質問が好きなのか、歩きながら彼女の矢継ぎ早の質問に答えながら色々話した。

その一つ、「なぜ旅をするの?」とストレートに聞かれた際はドキッとした。日本出てここまでズバッと聞かれたのは初めてだった。会って5分だからな。

しかし、そこまで興味持って聞いてくれたのに、俺は上手く返せなかった…。

「長年の夢だった」「ユアンとチャーリーのユーラシア大陸横断の旅を観たのがキッカケだった」

この二つは話せたが、これは最も重要なことではない。ミゲルに代わりに伝えてもらおう。今度は、集まってくれたみんなに向けて。


アランもバイク乗りで(てかみんなそうなのか!?)、彼はあまり英語は話さないようだったが、スペイン語で俺のことを食事中も気掛けてくれてニコニコした陽気な兄ちゃんだった。年齢を聞いて驚いた。彼は37歳で、このグループでは最年長。ララの35歳にも驚いたが、みんなめちゃくちゃ若くないか!?良い男に綺麗な女性陣の集まりなのだ。


そうこうしていたらミゲルのガールフレンドであるフロウルもやって来た。サンティアゴの頃からミゲルが見せる写真を通じて何度も彼女の顔は見ていたし、何なら本人が不在の間にシャワーまで借りてしまった。友人であり恩人であるミゲルの大切な人との念願の対面となった。

とても綺麗な方で(てかみんな綺麗なのだ、お世辞抜きに)、英語もペラペラ。なぜそう上手く話すのかと聞くと、普通に小学校から高校まで授業で勉強したからって。日本の外国語教育の見直しはどの程度まで進んだのだろうな…。

また好きな国の言語を覚えたくて勉強しているらしい。アンナと同じだ。

小学校の時ミゲルのお母さんが担任の先生だったらしい。どっちにも驚きだ。

シャワーありがとうねって話したら、「ユーシはいつでも使っていいよ!誰かさんはビールの缶捨てて行ってたけどね!」とか言ってミゲルが隣で笑ってた。夫婦漫才みたいなの、海外でもあるのかな、なはは。


最後に来たミゲルの友人の名はナチョ。ニックネームはモンキー。本名が何か猿と関係があるらしい。彼はルースィアにスマホを奪われて彼をフった元カノにメッセージを送ろうぜってネタにされて遊んでいた。日本でもよくみる光景だ。世界中こうなんだろうな。

 

21時くらいからベランダに一同集まって、ミゲルが美味しく焼いてくれる間も食事が始まってからもずーっとビール飲んでたくさんの話をした。


日本のアニメはどうやらまだまだ俺が思っている以上にアルゼンチンの人たちの生活の中にあるらしい。子供の頃から観て、俺たち日本人が洋画で英語を知るように日本のアニメから日本語を知るようだ。

以前ミゲルから聞いたが、日本語音声で英語字幕で観ることが多いらしい。最近の作品はスペイン語でも字幕があるし、吹き替えもあるだろうけどね。サンティアゴで二人で観たNARUTOスペイン語だった。


このことから言葉の発音の話題にもなったが、俺が皆んなの名前すら発音できなくて四苦八苦してるのを皆んなで笑い合って面白かった。ちくしょう舌の動きが違いすぎるんだよなー。

フロウルのルは舌を振動させるのがアルゼンチン流らしく、これは簡単にできた。

アランとフリャンのRかLかわすれたがこれが難しかった。

彼らには「雄志郎=Yushiro」の「ro」も難しいみたいだしな。ユーシてあだ名付けてくれた地元の友人たちに感謝だな。


女性に対して使う良い表現を教えてやるよってことで、女性陣から一つベストなスペイン語を教えてもらった。

「ソース エルモーサ」

意味はそのまま、あなたは美しい。いつ使うかわわからんが、気にった。発音も素晴らしいと褒めてもらえたぜ。流れるような響きもスペイン語らしくて美しい。

他にはフリャンがふざけて下品な表現を俺に教えてくれたが、女性陣に怒られていた。

「テ・コモトーダ」あなたを食べたい。直球すぎるが日本語的表現でもあってわかりやすい。

「ボンボン」これはディスコとかで気に入った女性に言うと良いよとルースィアが言っていた。

「セラカショウンパペル」これはメモしてないな。ミゲルに聞こう。


お礼に日本で最も有名であり日本語特有の奥ゆかしさのある表現を一つ女性陣に教えた。

「月が綺麗ですね」=「The moon is beautiful」=「La luna es hermosa

一人の有名な日本人小説家がこの表現を生んだと補足した。

あ、「ばりよか」=「Very good」=「Muy bien」もアルゼンチンで広めてやろうと画策したが、「これは日本語だけど、俺の地元独自の言葉だよ」と説明するのに苦労した。方言を上手く英訳できないためこのように伝えた。皆んなが口を揃えてバリヨカと連発する光景は面白かったな。


お互いの国の人間同士の距離感についても話した。

南米の挨拶にべシートがあり、これは通常女性のみが行うものだ。

しかし、アルゼンチンでは男性同士でも行うそうだ。そういえばチリではなかったなと後で気付いた。

一方日本は、基本的にはお互い触れることなく、挨拶で声を掛け合うだけだ。体が触れ合うとしたら、握手くらいか。しかし握手さえも人によっては恐怖を感じることがあるため、初対面は愚か友家族や人同士でも考えようによっちゃ距離感の測り方は実に難しいと言える。

俺たちが握手をしたり抱き合うのは、たぶん本当に特別な時だろう。俺が今回旅立つ時が正にそうだった。今生の別れになるかもしれんし。


それを伝えると信じられないと皆驚いていた。

全くだ。俺は南米に来てよくこのことについて考えるようになった。もっと俺たち日本人は触れ合うべきなんじゃないかって。

肉体を持った相手の存在を自身の体で感じ、お互いこの世界に生きていることを実感すべきなんじゃないかって。

そうすることで、相手への思いをもっと素直に口にできるかもしれない。相手が大切な存在であると知ることができるかもしれない。

実際、南米の人たちは陽気なだけでなくとても素直だ。

俺は日本人の気質を否定したいわけではない。俺たちが長い歴史の中でそうして来たことによって生まれた幾つもの日本人らしい素晴らしい文化や芸術などが生まれたことも知っている。

だが、やはりたまにでもいいからもっと単純に居る方がいい時もあるんじゃないかなって思うんだ。

これまでチリとアルゼンチンで色んな人達に出会って、俺は日に日にそう考えるようになった。とても素敵な文化だと俺は思う。


とまあ、こんな割と深めの話もしながら夜は老けていった。

肝心のアサードだが、もうほんとに何でこんなに美味いのかってくらいだった。

だって、スーパーで安い値段で普通に売ってる肉だぜ?同じ肉を俺が焼いてもこうはならんのだろう。

味付けも塩胡椒のみで非常にシンプル。肉の旨みを楽しむにはやはりこれなのだろう。ソースを欲しいと一度も思わんのが不思議だ。

全体的に肉の質が高く、調理する人間の腕も確かなのだろうな、アルゼンチンは。冗談抜きで日本のステーキに満足できるか心配だ。元々赤身が好きだしな。

 

最後は全員で写真を撮った。光栄なことに中心に立たせてもらった。

 


帰りは全員とべシートして、ミゲルの運転で帰った。

帰りの車内でのミゲルとフロウルの痴話喧嘩も面白かった。IQOS黙って買ったんがバレた時のかつひろとリカちゃんやん。

「私がユーシにとっておきの場所を紹介するから任せて!」というフロウルに対し、「彼女はかなり癖がある評価をしがちだから耳を貸すなユーシ」と言って何を言うかと争っていた。

 


車を降りてミゲルんちに歩いて行くときにちゃんとミゲルに伝えた。俺は今夜最高の経験をしたと。招待してくれてありがとうって。

そういえば車内でこんな会話をした。

「もちろんエル・チャルテンには行ったよね」とミゲル同様フロウルにも聞かれたため、「いや、実は行っていないんだ」と答えたらやはり「嘘でしょ!?」みたいに驚かれた。もう何度目だこの会話は、はは。

代わりというわけではないけど、「ブエノスの近くに飛行機ですぐに安くで行けるとっておきの大自然があるから、バイクを彼の家に置いて2泊3日くらいでどう?」と提案してくれた。

それでもあまり乗り気な顔をしていなかったのだろう。俺の顔を見て彼女が「あまり興味がないのはなぜ?」と聞いてくれたので自分の言葉で答えることができた。

 


実は俺は、他人からしたら信じられないほど自然を見に行くのに興味がない。旅の道中になければまず行かない。この国に来たからあそこには必ず行こうとか、一つもない。それは日本でも同じだ。

なぜなら、俺のルーツに関わることでもないものを見に行っても、感動する自信がないからだ。感動しない自身を何度も感じると無感情になってしまった自分を感じざるを得ず、下手すりゃ憂鬱になることは間違いない。

だから、わざわざそんなことにエネルギーを費やすのなら、その分本当に自分がやりたいこと知りたいことに全力を注ぐ。

金も時間も気力も有限だ。

だから俺は、今そうしているように街や集落に流れ着いて、現地の人々に混じって普通に飯食って寝て、遠くからでも近くからでも彼らの人生を観察し、眺めていたいのだ。願わくば一瞬でもその中に混ざらせてもらい、経験から得た知識としたいのだ。

俺は何よりも人間に興味がある。これまでの人生で、人間こそが最も人間を感動させると確信した。

だからこそ、今夜みんなと過ごした時間は本当に本当に最高で掛け替えのないものだったのだ。

それを拙い英語で簡潔に話すと、彼らは深く頷いて理解してくれた。

 

 

本当に最高の時間だった。

友達の友達んちに招かれ、アルゼンチ流の肉とビールをいただきながら他愛のない話も深い話もして。本当に仲間に入れてもらえたようだったよ。

俺はこんな感じでしか話せないが、みんな俺に合わせて気楽に親身に話してくれた。

同年代のゆうじんがアルゼンチンでたくさんできたって言っていいのかな。本当に楽しかったよ。

いつも言っているが、こんな時間を過ごせるなんて、日本を出る前も、旅を志した時も想像だにしていなかった。

本当にありがとう。

俺はこの日を死んでも忘れない。

 

 

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左から、フロウル、モンキー、ルースィア、アラン、ミゲル、フリャン、ララ。

ありがとうね、みんな。

 


走行距離 0km

金 飯1000